未来への舵取り – 世界初のバイオマス輸送EV船「あすか」が就航
2023年7月7日
株式会社e5ラボ
Marindows株式会社
未来への舵取り – 世界初のバイオマス輸送EV船
「あすか」が就航
~ EV化とデジタル化の融合によって、内航海運の新時代を創る ~
◆EV化とデジタル化で港湾内ゼロエミッションと運航からの CO2排出量の削減に加え、船員の労務負荷軽減を実現
◆第二世代EV船として、既存船と同等の速力(最高11.8ノット)と航続距離(5,000km)を実現
◆アップデートによって進化するシステムを標準化・モジュール化し、普及へと繋げる
◆国交省海事局が策定した連携型省エネ船のコンセプトを反映したEV(電気推進)船の第一号船
持続可能な内航海運への突破口を開くことを目指し、e5ラボ、そしてMarindowsは共同で世界初の完全電気推進バイオマス輸送船「あすか」の就航をさせました。本船は、業界が直面する『環境問題』と『熟練船員不足問題』という2つの難題を解決するために開発されました。
◾️ 環境への約束 – ゼロエミッション、低カーボンのさらに先へ
「あすか」は、内航貨物船としては最も隻数が多い499トンタイプの船で、2基のモーターを駆動力とし完全に電気のみで推進するEV(電気推進)船で、大容量蓄電池と発電機を搭載します。これにより、入出港および荷役中ゼロエミッションが可能となり、特に港湾のCNP(カーボンニュートラルポート)に貢献します。CO2排出だけでなく、NOx、SOxそして港湾周辺にて近年問題となっている煤煙や騒音、振動の排出を無くすことで周辺地域の居住環境を大幅に向上することで、“快適な周辺地域環境保護”という脱炭素のさらに先の価値を提供します。この環境配慮型の取り組みは、温暖化問題と共に社会全体での課題となっている地域環境保護の一環として、必要不可欠なソリューションとなるでしょう。
EV化や運航改善といった各種先進ソリューションの組合せにより、「あすか」が就航する神戸と相生間の輸送では、既存同型船と比較しCO2排出量を最大50%削減します。これは内航海運の環境への影響を大幅に減らすことを可能にし、持続可能な内航海運の新時代の答えとなります。
◾️ 革新の力 – 第二世代EV(電気推進)化技術による小型化と高効率実現
e5ラボは、共創パートナーである三菱造船と共同で、船全体の開発とEVパワートレインのインテグレーションを担当しました。三菱造船が開発したEV専用新型船型は既存船比20%以上の効率向上を実現。さらに、第二世代EVパワートレインの採用により、第一世代EVパワートレイン比でサイズと重量を80%削減し、同時に10%以上の効率向上を達成しました。これらの進歩は、本船で新規に採用した革新的なDC(直流)グリッドと、PMモーター、水冷インバーター、そして次世代制御システムにより実現しました。
第二世代EVパワートレインと発電機の最適組合せによって、「あすか」はEV船の課題であった『速力』と『航続距離』の課題を解決し、既存船と同等以上の11.8ノットの速力、2,700マイルの航続距離を実現すると同時に、EVパワートレインのモジュール化によって20%以上のコスト低減を実現しました
◾️ 誰でも動かせる船、みんなが乗りたくなる船へ – 熟練者不足を技術の組み合わせで解決
Marindowsは、乗組員と陸上スタッフの省力化・省スキル化と安全性・効率性向上を目指し、先進的な船舶自動化支援システムを実装しました。このシステムは、船舶運航の各面、特に事故が多く熟練船員を必要とする出入港作業を自動化・省人化・省スキル化し、さらに遠隔監視を可能にします。最も人手が必要となる離着桟作業をこれまでの5名から3名まで削減(運航は4名)することを可能とし、さらには安全性と効率性の向上を実現しています。これらの最新技術を組み合わせたものを標準化・モジュール化することで、誰でも低コストで最新技術を活用できる『最新技術の社会実装』へと繋げていきます。
◾️ 進化する船 – アップデートによって価値を高める
「あすか」に搭載されたEVパワートレインと自動化支援システムは、まるでスマホのようにアップデートにより進化することで、より安全に、より効率的になることで船の価値を継続的に高めます。
具体的には、バッテリーの増設や運航解析と制御プログラム修正といったアップデートによって港湾内ゼロエミだけでなく運航全体の更なるエミッション削減も実現できます。
また、自動化支援システムのアップデートによって、更なる省力化・省スキル化と同時に、安全性・効率性・労働環境の継続的な向上を実現できます。
◾️ 内航海運の持続的成長への責任
e5ラボとMarindowsは、先進的船舶の開発・導入を通じて乗組員の労働環境改善と地球環境保全に取り組むと共に、より安全で質の高い輸送サービスを提供することで、魅力的で持続的に成長する内航海運の実現へ挑戦します。「あすか」は、日本国内だけでなく、世界の内航海運をリードする新たな旗艦として、新たな航路を切り開きながら、魅力的で持続可能な未来を目指して航海を続けます。
◾️「あすか」の仕様
船の種類 | 電動推進バイオマス輸送船 |
主寸法 |
全長71.89m、全幅12.00m、深さ6.91/4.04m、喫水4.01m |
総トン数 /裁貨重量 |
496トン / 1,680トン |
航海速力 / 航続距離 |
11.0 ノット(時速20.4km)/ 2,700マイル(約5,000km) |
積載貨物 |
バイオマス燃料 |
エミッション性能 |
100%ゼロエミッション可能(港内および出入港操船に限る) |
CO2排出量 |
既存船比で最大50%削減 |
推進方式 |
2軸電気推進(360kW x 2基 PMモーター) |
搭載バッテリー |
440kWh リチウムイオン電池 |
建造造船所 |
本田重工業株式会社(大分県佐伯市) |
企画・開発 / SI | e5ラボ、Marindows、三菱造船 / IHI原動機 |
◾️ 各社代表からのコメント
株式会社e5ラボ 代表取締役社長 中野道彦氏:
「e5ラボは、「あすか」のプロジェクトを通じて、内航海運におけるEV化とデジタル化の融合を実現しました。これにより、海運業が抱える環境問題と人手不足の解決に寄与し、地域環境保護という新たな価値の付与によって、持続可能な内航海運と社会の実現に貢献していきます。」
Marindows株式会社 代表取締役社長 末次康将氏:
「Marindowsは、乗組員と地上スタッフのために自動化とデジタル化の力を活用し、より安全で効率的かつ、魅力的な航海を実現にします。このような革新技術の標準化とモジュール化によって誰もがリーズナブルに利用できる環境を整えることで、革新技術の社会普及と内航海運の未来を切り開いてまいります。」
◾️ 国交省が推進する連携型省エネ船のコンセプトに則った『蓄電池を活用したハイブリッド推進船』
「あすか」は、2023年3月30日に国交省海事局が策定した連携型省エネ船のコンセプトを反映した電気推進船第一号船になります。
出所:国道交通省海事局作成資料(https://www.mlit.go.jp/maritime/content/001598037.pdf)
◾️ 本船の特徴的な機器紹介